実験動物の適正な飼育管理は、動物の福祉、研究データの信頼性の向上及び動物の飼育管理に携わる者の健康と安全を実現するうえで不可欠である。そのためには、動物種に応じた適正な環境を整備及び維持し、常に愛情を持った飼育管理に努めなければならない。更に、動物を用いた実験を行おうとする者は、適正な飼育管理に協力しなければならない義務と責任がある。ここに滋賀医科大学動物生命科学研究センター運営委員会は、「実験動物の飼育管理に関する指針」を次のとおり定める。

1. 飼育条件

ケージ及びその他の飼育器

ケージ等の飼育器は、実験用動物の肉体的社会的環境要因のなかで最も重要なものの一つとされている。動物に安らぎをもたらし、研究上の必要性を満たし、実験条件の均一性をできるだけ保つために、以下の点に注意して設計し、使用しなければならない。

  • 動物が自由に運動し、正常な姿勢が保てるとともに、休息に適した構造であること。
  • 快適な生活環境が維持されること。
  • 動物にとって安全な逃亡防止の囲いがあること。
  • 飼料と飲水を容易に摂取できること。
  • 適切な換気ができること。
  • 体温維持、排尿、排便、繁殖等、動物の生物学的欲求を満たすことができること。
  • 動物に適した乾燥状態と清潔さが保たれること。
  • 不要な肉体の拘束がないこと。 
  • 有害物質から動物が保護されること。

飼育器は動物の健康を維持し、研究の実施が容易なものでなければならず、かつ堅牢で耐久性があり、隣接区域との交差感染を可能な限り防止できる設計が求められる。ケージは容易に給餌、消毒できるように、平滑で浸透性のない表面を有し、汚物や水分が溜りやすい突起、角あるいは縁の少ないものがよい。又、動物の安静を妨害することなく内部を観察できるものが望ましい。
給餌器や給水器は、交換、洗浄、補給の容易なものでなければならない。ケージ、運動廊下、囲い等は動物を傷つけず、快適性を高め、消毒が容易なように維持しなければならない。

社会的環境

グループ内又は何らかの形で接触のおこり得る個体間の相互作用のすべてが、社会的環境の範疇に含まれる。
ケージ内の飼育動物への社会的環境の影響は、動物種や動物の経歴により一様ではなく、物理的な環境に比較して最適条件の設定が困難である。しかしながら、これまでの経験及び知識からある程度の基準設定は可能である。
適切な社会的環境の設定にあたり、その動物が自然界では単独生活を営むか又はグループ生活を営むかにより、個別飼育にするのか又はグループ飼育にするかを判断する必要がある。折り合いのつく動物同士には、グループ飼育が考えられるが、その場合、飼育密度と分散余地、飼育開始時における動物同士の馴れ、年齢、性別及び社会的ランクについての検討を必要とする。イヌ、サル類及びその他の高度に社会性を有する哺乳動物のグループ構成は、グループの統合や新規動物の導入により行動や生理機能に変動が生じることから、できるだけ変更を避けることが望ましい。特に、長期飼育する場合は、動物種に適した環境整備に配慮しなければならない。

飼育スペース

ケージによる飼育は、動物に種々の影響を与えるが、理想的なケージの大きさを算出する方法はなく、従って、専門的判断を基盤にした経験に頼らざるを得ない。たとえケージ内動物に影響する諸々の要因が解明され、評価できたとしても、唯一で理想的な又は完璧な方式を確立することは困難である。次に実験動物が必要とする最小スペースを表ー1に示した。ここに示した数値は、許容範囲に関する合理的な知見から算出されているものと考えられる。(参考資料:5、10)

表1-1 実験動物に必要な最小スペース

動物種 体重(g/kg) 飼育方式 床面面積
(cm2・m2)
高さ(cm)
マウス <10 ケージ 38.71 12.7
10-15 ケージ 51.62 12.7
15-25 ケージ 77.42 12.7
>25 ケージ 96.78 12.7
ラット <100 ケージ 109.68 17.78
100-200 ケージ 148.4 17.78
200-300 ケージ 187.11 17.78
300-400 ケージ 258.08 17.78
400-500 ケージ 378.12 17.78
>500 ケージ 451.64 17.78
ハムスター b <60 ケージ 64.52 15.24
60-80 ケージ 83.88 15.24
80-100 ケージ 103.23 15.24
>100 ケージ 122.59 15.24
モルモット b ≦350 ケージ 387.12 17.78
>350 ケージ 651.65 17.78
ウサギ b <2 ケージ 0.14 35.56
2-4 ケージ 0.28 35.56
4-5.4 ケージ 0.37 35.56
>5.4 ケージ 0.46 35.56
ネコ ≦4 ケージ 0.28 60.96
>4 ケージ 0.37 60.96
イヌ c <15 ケージ 0.74 81.28
15-30 ケージ 1.12 91.44
>30 ケージ c c

a:床面からケージの上端までの距離。
b:保育中の母親はこれより広いスペースを必要とする。
c:個体や品種の体型により、修正を要する場合がある。(動物が快適な姿勢を保つ高さと、 イヌの尾端から尾の先までの長さに15.24cmを加えた値を一辺とする床面積を必要する。)

表1-2 実験動物に必要な最小スペース

動物種 体重(g/kg) 飼育方式 床面面積
(cm2・m2)
高さ(cm)
サル類 グループ1 <1 ケージ 0.15 50.8
サル類 グループ2 1-3 ケージ 0.28 76.20
サル類 グループ3 3-10 ケージ 0.40 76.20
サル類 グループ4 10-15 ケージ 0.56 81.28
サル類 グループ5 15-25 ケージ 0.74 91.44
サル類 グループ6 >25 ケージ 2.33 213.36
ハト ケージ 0.074 e
ウズラ ケージ 0.023 e
ニワトリ <0.25 ケージ 0.023 e
0.25-0.5 ケージ 0.146 e
0.5-1.5 ケージ 0.093 e
1.5-3 ケージ 0.186 e
>3 ケージ 0.285 e

d:おおよその大きさをもとにグループ分けした時の各グループに属するサル類を示す。
グループ1:マーモセット、タマリン、各種サル類の幼仔
グループ2:オマキザル、リスザル及びこれらと類似の種
グループ3:マカカ属およびアフリカ種
グループ4:雄性マカカ属および大型アフリカ種
グループ5:ヒヒおよびぶら下がる習性のない15kg以上の種
グループ6:大型類人猿およびぶら下がる習性のある種
個別ケージに代わるケージを用いてもよい。例えば幼仔や未成熟動物は、グループケージで飼育できる。成熟動物をグループ飼いする場合は、折り合いのよい個体のみを同居させることが不可欠である。グループ飼育開始直後の動物については、闘争による外傷の発生を監視しなければならない。グループケージには止まり木や隠れ場所を設ける。サル類用囲いや運動場には1.8m以上の高さが必要である。チンパンジーやぶら下がる習性のある種(オランウータン、テナガザル、クモザル、ウーリーモンキー等)には、ケージの天井からぶらさがったとき、身体を伸ばしても足が床に届かない高さが必要である。
e:トリが直立したとき、頭部のおさまる空間が必要である。

2. 飼育環境

それぞれの動物種及び生活形態に適応した飼育環境を維持しなければならない。ラットやマウスのように一般的な実験動物は順応性に優れ、ケージ飼育にすぐ適応するが、あまり一般的でない動物には特別な配慮が必要である。たとえば、ある種のハタネズミは頻繁にケージ交換すると繁殖行動に障害が現れる。以下に、一般的な実験動物に対する留意事項を示すこととする。

狭義及び広義の環境

動物にとっての狭義の環境とは、ケージ又は一次的囲い内の温度、湿度等の動物を直接とり巻く物理的環境をいい、又、広義の環境とは、飼育室あるいは二次的囲い内の物理的環境をいう。これら二つの環境には差のあることが多い。温度、湿度及び炭酸ガス並びにアンモニア濃度は、ケージが個別に換気されていない限り飼育室内より高い。両環境の差はケージの形状、ラックの構造等によって異なるが、狭義の環境条件が実験成績に影響を及ぼすことに注意を払う必要がある。

温度と湿度

温度と湿度は代謝や行動に影響を与えることから、これらは動物の物理的環境の中で最も重要な要素と考えられている。温度変化に関係なく、動物の酸素消費量が最少となる環境温度の範囲を温度中性域という。経験的に推奨されている発育、快適性、反応性及び順応性のための、至適乾球温度幅は、一般的に温度中性域より低い。次に各動物種の至適温湿度範囲を表ー2に示した。

表2 実験動物に適した温度、湿度

動物種 乾球温度(℃) 相対温度(%)
マウス 18-26 40-70
ラット 18-26 40-70
ハムスター類 18-26 40-70
モルモット 18-26 40-70
ウサギ 16-21 40-70
ネコ 18-29 40-60
イヌ 18-29a 30-70
サル類 18-29 30-70b
ニワトリ 16-27c 45-70

a:術後回復用ケージ及び仔イヌ用ケージでは27-29℃が望ましい。
b:マーモセット、タマリン、ヨザルなどでは60-65%が望ましい。
c:6週齢以上の雛に適用。初生雛にはこれより高い温度がよい。

換気

換気の目的は、適切な酸素の供給、呼吸、照明及び器材から発散する温度負荷の除去、ガス状、粒子状夾雑物の希釈及び給排気の調節にある。狭義の環境の良し悪しは、換気によるケージ内の温度条件維持と汚染防止効果によって決まる。粒子状及び有毒ガス夾雑物の除去処理を行わずに、動物施設の室内空気を循環させてはいけない。又、動物飼育区域と付帯区域の気圧調整についても検討が必要である。検疫、隔離、汚染器材保管、バイオハザード材料の使用及びサル類飼育のための区域は陰圧に保たなければならない。それに対して、清浄器材区域、病原体を保有していない動物の飼育区域は陽圧に保たなければならない。

照明

部屋には均等に光線がゆきとどくとともに、施設管理、動物の観察、安全作業及び動物の安らぎに求められる光量が満たされることが必要である。動物の健康と生理学的安定性維持に要する光量の厳密な値は明らかにされていないが、極度に高い照度下にあっては網膜への影響が生じることから、動物とその管理の面から床上40~85cmで150~300ルクスが適当と考えられる。しかし、温度、湿度や照明時間、結露の発生などの点から、外窓の設置及び屋外光線の差し込みは、動物施設にとって好ましくなく、人工照明を用いる必要がある。照明は、白色あるいは昼光色の蛍光灯で差し支えない。

騒音

動物自身及び動物の飼育管理作業から発する騒音は、動物施設には避け難いものである。ケージの洗浄や汚物処理など騒音を発生する作業は、動物室と離れた部屋若しくは区域で行わなければならない。又、作業も騒音を極力抑えるように努力しなければならない。マウスやラットは 85デシベル以上の音に常時さらされると、聴覚的、非聴覚的な影響(心拍数、呼吸数、血圧等の上昇)を与えることから、イヌやサル類のように騒音を発生する動物種は、げっ歯類、ウサギなどと離れた場所で飼育すべきである。

3. 飼料

飼料は、実験計画で特別の指定がない限り、動物固有の要求に応じて、嗜好性が高く適切な栄養素を含むものを毎日与えなければならない。
適切な給餌は、動物が正常に発育し健康状態を維持させるとともに、妊娠、哺育中の動物にとって、その機能を十分に果たせるものでなければならない。
動物管理者及び飼育技術者は、病原体、寄生虫、疾病の媒体(昆虫など)及び化学的夾雑物の施設内持込みを防止するために、飼料の製造及び販売元における栄養学的品質保持の方法と、輸送、貯蔵及び取扱に注意しなければならない。サル類に与える果実、野菜など腐敗しやすい飼料には生物学的、化学的夾雑物を含むことがあり、十分注意を払う必要がある。
飼料に含まれる夾雑物はたとえ中毒症状を発現させるほどの量でなくても、酵素活性、ホルモン作用など生化学的、生理学的機能に著しい変化をもたらすことがある。均一なデータを得るためには、各成分と生物学的ないし非生物学的夾雑物について、事前に検査、定量された証明書付きの飼料を求めなければならない。又、購入した飼料の保存期間中栄養価低下、品質変化などにも十分に注意しなければならない。一般に、飼料は、高温、高湿及び昆虫の発生等の不衛生な保存を避け劣化を防ぐことにより、製造日より6カ月間は使用できる。しかし、ビタミンCを含むサルやモルモット用飼料の使用期限は、一般的に製造日より3カ月間である。従って、ビタミンCを摂取しなければならない動物種には、ビタミンCを飼料に添加し、又は果物、野菜を与えたりしてビタミンCを補給する必要がある。冷蔵により栄養学的品質が保持され保存期間が延長されるとはいえ、保存はできるだけ短期間が望ましい。
オートクレーブ滅菌用飼料は、滅菌による養分の消失を考慮しなければならず、滅菌後はできるだけ速やかに使用しなければならない。飼料は低温、乾燥、清潔、防虫、夾雑物による汚染防止などの条件を満たす指定された専用区域に保存し、パレット、棚あるいはカート上に積み上げ、床面に直接接触させないようにする。又、果実、野菜など腐敗しやすい飼料は冷蔵庫内で保存するよう配慮しなければならない。既に開封済みで使用していない飼料は、汚染や病原体の拡散防止のために防虫容器に格納して保存しなければならない。更に、飼料容器は動物飼育室間で移動させてはならず、この容器も定期的に洗浄、消毒する必要がある。

4. 床敷

床敷は、ラットやマウスなどの小動物にとっては、安らぎを与えるうえで必要なものである。床敷は吸湿性に優れ、動物や人に障害となる有毒化学物質を含まず、動物にとって食べにくいものでなければならない。又、ケージ交換までに動物の体表が糞、尿などで汚染されず、かつ、給水瓶の先管が接しないような量を必要とする。床敷はパレット、棚、カートなどに載せ、床面から離して保存する。床敷の使用ができない実験(代謝ケージによる尿採取、線繊摂取を避ける実験など)においてはスノコを用いることになる。スノコは金属より保温性、居住性を考慮した形状と材質のものを選ぶべきである。

5. 飲水

通常の動物は新鮮で汚染されてない飲水を常に必要とし、水質はpH、硬度が適正でかつ微生物や化学物質が混入していないものでなければならない。通常の飼育には水道水で差し支えないが、実験によっては高度に純化された水を必要とすることもあり、更に、微生物学的統御下の動物ではフィルターによる濾過、塩素添加、滅菌等の処理が必要である。給水にあたっては、給水瓶、自動給水装置などの給水器が正しく機能しているかどうかを、日常作業の中で点検しなければならない。又、自動給水装置からの水の飲み方を動物に教えなければならないこともある。給水瓶は再充填するより交換するのが望ましい。もし再充填をする場合は、給水瓶を取り外したケージに戻す必要がある。

6. 衛生

それぞれの動物種及び生活形態に適応した飼育環境を維持しなければならない。ラットやマウスのように一般的な実験動物は順応性に優れ、ケージ飼育にすぐ適応するが、あまり一般的でない動物には特別な配慮が必要である。たとえば、ある種のハタネズミは頻繁にケージ交換すると繁殖行動に障害が現れる。以下に、一般的な実験動物に対する留意事項を示すこととする。

清潔

動物を飼育する施設には衛生管理上の配慮が必要である。動物飼育室、廊下、倉庫等は必要な頻度で適当な洗剤や消毒剤を用いて、ちり、ごみ屑及び有害夾雑物を除去し、又、モップ、バケツ、箒などの掃除用具の異種動物間での共用は避けなければならない。
ケージに使用する床敷は、動物の体表を乾燥させ清潔に保つために必要な頻度で交換する。ラット、マウス、ハムスター類のような小型げっ歯類の通常飼育では、週1~3回の床敷交換が適当である。より大型のイヌ、ネコ、サル類の場合は、汚れた受け皿などは毎日交換しなければならない。水洗による汚物除去は、少なくとも1日1回以上行い、その間、動物に水がかからないように注意する必要がある。特に、仔動物はケージや囲いから室内の別の場所に移し、水滴がかからないような方法を取ることが必要である。なお、頻繁な床敷やケージ交換は繁殖や実験の遂行に逆効果を及ぼすことがあるので、その場合は、動物の衛生状態により判断すればよい。
動物の収容前にはケージの消毒を必ず行わなければならない。ケージ、ラック及び給餌、給水器などの付属器具は、清潔保持と夾雑物による汚染防止のために頻繁な洗浄、消毒を必要とする。げっ歯類の平底ケージや付属器具はケージ交換の都度、又、ラックは1日1回、その他の動物用ケージも、少なくとも2週間に1回は洗浄するように計画する。更に、ケージ類も含めて給水瓶、先管、ゴム栓などの給水器具も、洗浄後高圧蒸気滅菌あるいはガス滅菌しなければならない。自動給水装置の配管内に細菌が繁殖することがあるので、定期的に配管内の水を捨て洗浄しなければならない。飼育室内、廊下等の消毒作業には、ちり、ごみ等を除去した後、できれば水洗し、その後、消毒薬を用いて清掃する。現在常用されている消毒剤の特性は、表ー3に示すとおりである。 

表-3 消毒薬の種類と特性

薬品 (商品名) 常用濃度 ウィルス 細菌芽胞 好酸菌 グラム
陽性菌
グラム
陰性菌
真菌 特性・使用上の
注意事項
エチルアルコール 70-90% × 刺激性有り
ホルモアルデヒド燻蒸 15-20
ml/m3
刺激性、腐食性、蛋白浸透性有り
第4級アンモニウム塩
(オスバン、マイクロカット、テゴー等)
70-90% × 石鹸と併用すると無効、刺激性
有り
次亜塩素酸
ナトリウム(ビューラックス等)
100-200
ppm
有機物の存在で
効果減弱
ヨウ素
(マイクロクリーン、イソジン等)
50-200
ppm
金属の腐食、器具類を着色、ヨウ素蒸気に毒性有り
ホルモアルクロルヘキシジン(ヒビテン等) 0.1-0.5% 刺激性無し、
低毒性

手指は水でよく洗浄した後、薬剤を用いて消毒する。皮膚に対する刺激性の少ない薬剤としては、クロルヘキシジン、第4級アンモニウム塩(界面活性剤)、ヨード系消毒薬、70%アルコールなどがある。各種運搬車、作業衣、実験衣、ゴム手袋などについても、水でよく洗浄した後、高圧蒸気滅菌、又は、それの困難なものは第4級アンモニウム塩、クロルヘキシジン、ヨード系消毒薬などに浸漬あるいは噴霧し常に清潔に保たなければならない。
使い捨て用の帽子とマスクは着用後、直ちに廃棄しなければならない。又、手指などを消毒後に拭く場合は、使い捨て用紙タオルの使用をすすめる。

廃棄物の処理

ごみ、糞尿、床敷、動物の死体、その他の汚物は環境汚染につながることから、人への汚染に十分注意し、速やかに廃棄しなければならない。
これらの廃棄物は、ビニール袋あるいは防水性の飼料袋などに入れ、運搬途中の漏水、汚物の散逸を防止したうえ、速やかに焼却しなければならない。焼却が速やかにできない場合は、一時的に保管しなければならないが、悪臭の発生を防ぎ、ハエ、ゴキブリなどの害虫の発生とげっ歯類等の侵入が防止できるような場所、容器などを選ばなければならない。害虫の侵入を見た場合は速やかに捕捉し駆除するとともに、発生や侵入の原因に対する対応を早急に行わなければならない。もし薬剤を使用する場合は、飼育中の動物及び人に悪影響を及ぼさないように十分注意する必要がある。
使用済みの注射器、針、カミソリ等の金属、ガラス、プラスチックの廃棄物は、漏れがなく安全かつ衛生的な容器に入れて廃棄しなければならない。
感染実験、検疫等に使用し人への感染の恐れのある微生物が含まれているものは、あらかじめ滅菌又は消毒した後、廃棄しなければならない。

7.個体識別と記録

動物の個体識別は動物飼育室、ラック、ケージ、カード、首輪、バンド、下げ札、付け札、着色、耳パンチ、耳標、入れ墨等により行う。実験動物に関する記録は不可欠であり、その内容は、個体識別カードに記入された僅かの情報から個体に関する詳細な記録まで多様である。個体識別カードには動物の由来、担当研究者の氏名と所属、関連年月日などが記入されていなければならない。研究内容によっては個体の記録が求められる。由来及び最終処分に関する記録も必要性が高く、時には不可欠な資料となるので、個体記録として保存しなければならない。

8.緊急時、週末、祭日の管理

緊急事態が発生した場合、動物生命科学研究センター長、管理者及び飼育技術者と速やかに連絡ができるようにしておかなければならない。連絡者の氏名及び防災センターの電話番号を施設内の適当な数カ所に貼布し、かつ電話機ごとに明示しなければならない。
勤務時間外や日曜・祝祭日にあっても、緊急時の獣医学的管理が可能であるように準備しておかねばならない。(動物の安らぎを保ち研究上の必要性を確保するために、有資格者により日曜・祝祭日を含む毎日、動物の観察と管理が行われることが望まれる。)


付-1 獣医学的管理

獣医学的管理は動物管理計画に不可決なものであり、それには次の事項が含まれる。

  • すべての動物を毎日観察し、健康と福祉の現状をよみとること。
  • 疾病及び外傷の発生防止、統御、診断、治療を適切に行うこと。
  • 動物の取扱、保定、麻酔、鎮痛、安楽死処置などが適切に行われているか否かを監視すること。
  • 外科的処置及び術後管理の状況を監視すること。

獣医学的管理は、実験動物学に経験を積んだ獣医師の責務である。毎日の動物の観察は獣医師以外の者が実施しても差し支えないが、動物の健康状態、行動、安らぎ等に関する問題点が、担当獣医師に適時、正確に伝わるよう直接に連絡を行わなければならない。又、獣医師は、獣医学的管理に関連のある他の事項、たとえば、実験計画に関する助言(獣医学的管理、動物の飼育、動物福祉に視点をおいた計画書の見直しと提案)職場の健康管理、有害物質の封じ込め、人獣共通伝染病防止計画に対する監視、動物の栄養、飼育、衛生管理の指導を行わなければならない。

疾病の予防

疾病の予防は獣医学的管理の主要目的である。動物の取扱方法の習熟以外にいくつかの事項がこれに関与する。

動物の導入

動物はすべて合法的に入手されなければならない。納入業者ごとの動物の品質評価に加えて、動物の輸送方法について検討する必要がある。導入ロットごとに発注明細書と照合し、動物種及び飼育環境に適合した方法で検収、検疫、馴化を行う。生産場での品質管理データが、それらの方法を選ぶうえでの参考になることから、必ず定期的な品質管理データの提示を求めなければならない。

検疫と馴化

検疫とは、新たに到着した動物をそれらの健康状態が判明するまで、既存の動物から隔離しておくことを意味する。効果的検疫によって、既存のコロニーへの病原体の侵入が抑えられる。
生産場における品質管理状況及び動物の健康診断は、大学における検疫の参考にできる。これらの情報入手により、げっ歯類に関しての検疫期間が到着時の検収時間として短縮される場合があるとしても、すべての動物について、実験使用前の馴化が必要であることに変わりはない。それによって動物は新しい環境に馴れ、より安定した生理状態及び行動を示すようになる。馴化の期間は、マウス、ラット、モルモットなどについては約7~10日を必要とする。他の動物についても、それ以上の期間が必要と考えられる。新規導入動物の健康歴に不明な点があれば、より広範な手法を用い、潜伏期にある動物が発病に要する期間を想定して、検疫を行わなければならない。次に示す事項は、検疫、馴化期間に実施する。

  • 人獣共通伝染病を含む疾病の診断、統御、予防、治療
  • 生理学的、栄養学的馴化
  • 必要に応じての入浴、薬浴、爪切りなどの手入れ

動物種、由来及び健康状態ごとの分離

動物種ごとの物理的分離は、感染の種間伝播防止、種間の闘争にからむ不安抑制及び実験上の必要性から求められるものである。通常は、動物種ごとに飼育室を分離する。しかし、それらが類似した実験に用いられ、類似の微生物学的品質を有する場合、あるいは室内に特別な飼育装置(ラミナーフローラック、クリーンラック、フイルター付き又は個別隔離ケージなど)が設けられている場合は、げっ歯目に属する異種同士の同室飼育が妥当と認められる場合もある。なお、由来を異にし微生物学的品質の異なる動物は、同じ動物種でも分離飼育する方がよい。

疾病検査、診断及び治療

すべての実験動物について、病気の徴候、外傷、異常行動の有無を、検収終了までは識別力のある職員が毎日観察しなければならない。特に、予想外の死亡や異常状態には注意する。発病又は外傷のある動物には、直ちに獣医学的処置を施す必要がある。又、伝染病の罹患が疑われる動物はコロニー内の健康な動物から隔離しなければならない。一方、グループあるいは室内の全動物について感染が明らかにされたり、その可能性が高い場合は、診断、治療及び対策を実施する間、動物をそのまま保持しておかなければならない。
予防、診断及び治療には承認されている最新の方法を取り入れ、又、確定診断を得るために、症状観察に加えて、剖検、病理組織学的検査、臨床病理学的検査、血清学的検査、微生物学的検査、臨床化学的検査等を実施することが望ましい。

附則

この指針は、昭和63年6月15日から施行する。
2.この指針は、平成14年4月1日から施行する。

参考資料

  • 動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年10月1日、法律第105号、平成12年12月1日改正)
  • 実験動物の飼養及び保管等に関する基準(昭和55年3月27日総理府告示第6号)
  • 染動物実験における安全対策(昭和62年5月国立大学動物実験施設協議会)
  • 感染動物用アイソレーターおよび感染動クラスII型安全キャビネット規格
    (昭和62年5月 国立大学動物実験施設協議会)
  • Guide for the Care and Use of Laboratory Animals (U.S.Department of Health and Human Services, Public Health Service, National Institute of Health, NIH Publication No.85-23, Revised 1985.
  • サルを用いる実験遂行のための基本原則(日本霊長類学会、霊長類研究、2巻、111-113頁、1986年)
  • 動物実験に関する指針(日本実験動物学会、実験動物、36巻、285-288頁、1987年)
  • 実験用ニホンザルの使用に関する申し合わせ(滋賀医科大学医学部附属動物実験施設運営委員会、 昭和61年)
  • 動物実験施設利用の手引(滋賀医科大学医学部附属動物実験施設)
  • Guide for the Care and Use of Laboratory Animals, Institute of Laboratory Animal Resources Commission on Life Sciences, National Research Council, NATIONAL ACADEMY PRESS, Washington, D.C. 1996.